Webデザインの職業訓練校に不合格になった話|落ちた理由を分析してみる

2021年5月21日

現在、Webデザイナーへの転職をめざしているのだが、そのためのルートとしてハローワークが仲介している職業訓練校に通おうと思った。専門知識も経験もない状態からはじめて効率よく学んで就職するにはこの職業訓練校が最適だと思ったのだ。

しかし、結論から言うと3月と4月に訓練校を受けて2連続不合格となってしまった。非常に残念だ。

今回は、これからWebデザインの職業訓練校をめざそうとしている人に私の経験談をお伝えしようと思う。落ちたとはいえ、まだ何も知らない人にとってはいくらか参考になるはずだ。後半では事情通の方からいただいたタレコミもご紹介する。

Webデザインが学べる職業訓練校とは?

職業訓練校は、別名ハロートレーニングとも呼ばれる。民間の専門学校や資格の学校がハローワークの委託を受け、就職に繋がる訓練を行っている場所だ。介護、事務、パソコン操作のコースが多いのだが、中にはWebデザインのコースもある。

埼玉だとだいたい2,3校、東京はもっとも多く、5校ほどある。

ハロートレーニング(職業訓練)のご案内 -就職に向けてスキルを身につけたい方へ-(埼玉)

ハロートレーニング(職業訓練)について|東京労働局

Webデザインと名の付くコースはすべて初心者を対象としており、おおむね次のような内容を学べるようになっている。

  • HTML・CSS
  • Photoshop
  • Illustrator
  • WordPress
  • AdobeXD
  • PHP
  • JavaScript

これらアプリやプログラミング言語を学びつつ、デザインの基礎学習やカメラの撮影技法、動画編集が学べる場合もある。いずれにせよ、Webデザイナーとして働くときの基礎を一通り学べるようになっている。

それから、Webデザインに限らず職業訓練校に通っている間は一定条件を満たすと毎月10万円の給付金がもらえるようになっている。給付なので、返還は必要ない。雇用保険に入っていなかった人は失業給付がないので、これはありがたい。

職業訓練受講給付金(求職者支援制度)|厚生労働省ホームページ

訓練校の見学会は必ず行くべし

訓練校は複数候補の中から自分にあうスクールを選んで、1月に1度だけ受験することができる。このとき、事前の見学会には必ず行った方がいい。

私は当初、「Webデザインを学ぶべき学校を選ぶのだから、学校のWebサイトを見てその実力が高そうなところにすればいい」と思っていた。まさにWebデザインをそこで学ぶのだから、判断材料としてはWebサイトだけでいいかも、と思ったのだ。

しかし、絶対に自分の目で確認した方がいい。

というのも、Webサイトの印象と実際の訓練校は全然ちがうからだ。むしろ、私の印象ではクオリティは反比例していた。

サイトはよくできてるのに見学会で聞いた内容はイマイチ。逆に、サイトは簡素でイマイチなのだが、見学会に行ってみるとサポート体制も設備も充実していたりする。だから、行ってみないと分からないのである。

見学会はハローワークを通さず、直接訓練校に申し込むかたちとなる。訓練校入学を考えている方はなるべく早めに見学会に参加してみよう。

フェリカテクニカルアカデミーの印象と面接内容

ここからは私が受けた2つの訓練校についてお伝えする。

最初、4月スタートのコースを受けたのは池袋の訓練校フェリカテクニカルアカデミー(フェリカTA)。ここは専門学校が母体となっており、カリキュラムが実践的だった。また、受講生は全員がポートフォリオと呼ばれる作品集を制作しており、見学会で見たものはクオリティが高かった。さらにネットでの評判もよく、サイト制作会社からの評価も高いようだった。

面接がどうだったかというと、なんと5分ほどで終了。想定していたありきたりな質問を5つ6つされて終わってしまったのだ。質問内容はこちら。

  • この訓練を受けようと思った動機
  • 前職ではどんなことをしていたか
  • これまでやってきたこととカリキュラムに重複はないか
  • 6ヶ月の訓練だが最後まで通えそうか
  • いつ頃就職したいか
  • 最後に質問は?

どれも用意していた短い回答を言うだけで終わってしまい、拍子抜けである。

そんな感じだったので、ここはもう受ける前から書類の段階で合否が決まっていたのだろう。結果、不合格だった。

あとでハローワークの人に倍率を聞いたところ、30人の枠に対して40人の応募だったそうだ。思ったより全然少ない……。倍率4倍とか5倍なら分かるが、こんな低倍率で落ちたということで、かなり暗雲が立ち込めた。

インタープランITスクールの印象と面接内容

次の月はまた別の訓練校を受けた。今度は新宿の学校・インタープランITスクールだ。

こちらもフェリカと同じ月に見学会に参加していたのだが、実を言うとこのインタープランITスクールの方が設備や指導体制の点で上だと思っていた。Adobeアプリは最新のAdobeCCを使っているし、パソコンはmacも用意されている。教室にはメインの教師と別にサポート役の人もいる。見学会ではプロの方がWeb業界の求人状況について具体的なお話をしてくれた。

前の月はフェリカが午後のコース、インタープランが午前コースだったために、「午後の方が遅刻しにくくていい」と思ってフェリカにしたのだが、次の月はインタープランも午後コースだったため、こちらに志望先を変更したのだった。

こちらはコロナ対応でZOOM面接だった。フェリカとは打って変わり、面接時間は15〜20分と長めだった。質問内容は以下。

  • 志望動機
  • 希望する職種
  • 前職の内容
  • 塾講師をやめた理由
  • 卒業した大学名
  • 修了まで通えるか

就職面接のようなかなり踏み込んだ質問もあった。「塾講師をやめたということですが、今考えてどうすればもっと長く続けられたと思いますか?」など。卒業した大学名は書類に記載欄がなかったのだが面接で尋ねられた。これはちょっと意外だった。

それから、クイズのようなテクニカルな質問と課題もあった。

  1. ブラウザを思いつく限り挙げてください
  2. ファイルとフォルダの違いを説明してください
  3. ZOOMのチャットでこのスクールの名前を打ち込んで送ってください

パソコンの基礎的な知識・技能があるかを試していたようだ。ブラウザは5種類挙げ、他の質問にも難なく答えることができた。ただし、ソツなく答えすぎたような気がするのだが……。

さて、すでに書いたとおり、こちらも不合格。倍率は調べていないが、おそらく3,4倍くらいあっただろう。あのあとインタープランITスクールは対面授業だけでなく、半分程度がオンライン授業になったようで、コロナ対応が迅速である。

職業訓練校の合否は「就職への意志」で決まる

ここからはインサイダーな情報も含めて、職業訓練校というものがどうやって受講希望者を選別しているか書いてみよう。ちょっと踏み込んだ内容になる。

私が職業訓練校に落ちた理由

推測だが、私が不合格になった理由はこうだ。

  • Web業界経験者なので訓練は不要と思われた
  • 自営業だったので訓練を受けても就職しないかもと思われた

この2つが決定的だったと思う。

私はもう4,5年、アフィリエイトや情報発信で自営業者として生活してきた。つまり、Web業界経験者であり、かつ、雇用されていなかった人間なのだ。これは職業訓練校にとっては招かざる受講生なのである。

その理由については、詳しい方からいただいた次の情報が参考になる。

職業訓練校の内部事情|人事評価と利権構造

以前から繋がりのある方にこんなメールをいただいた。了承を得られたので、そのまま引用しよう(赤文字は清水による)。

職業訓練校の合格・不合格は” 明確な就職への強い意思”です。

私の知人は(分野は違うのですが)、職業訓練委託校の事務をしております。
そこで(私の居住地域だけかもですが)内部情報を差しさわりの無い範囲でお話しします。

受講希望者の面接・募集期間後に、採用人選を県の職訓担当さんに報告します。
この時に県側から「卒業後、すぐに明確な就職の意思を持つ者を採用してください」と通達があるそうです。
そこには年齢や技術、多少の人物や性格の問題などは大きく関係せず就職の意思が重要な要素なのです。
Webデザインコースにかかわらず、職業訓練を受けて卒業した後は、かなり強力にどこかに”就職”することを求められます
清水さん自身がお話されてる通りで、訓練後に就職したいという強い意志をアピールする人でないと、合格はかなり難しいと思います。自分で開業というかフリーで仕事を受注したいという人は、合格できないようになってると思います。

その訳は…ちょっと生々しいお話になります。
このコロナ下であっても、県の職訓担当さんは”就職率”という数字をとても気にされているのです。
訓練終了後の再就職率こそが、県の職訓担当さんの成績であり評価に直結しているからです。

余談ですが、訓練途中で退校したりの場合、それは職業訓委託練校の責任として処理されます。退校率が高いと県からの助成金が減らされてしまうのです。(この辺はヤバい闇の話で…)

つまり、訓練校の合否を決める上で、組織の論理が2つ働いていることになる。

  • 再就職率に連動した県の担当者の人事評価
  • 退校率と助成金の関係(訓練校の利権)

こうした事情を踏まえると、受講生が途中でやめたり、修了後に独立してしまっては困るのだ。

上で私の経歴を紹介したが、こうした論理に照らすと、訓練校にとって私はかなり「地雷な人材」なわけだ。敬遠されても仕方がない。

組織の論理に対する感想

このような人事評価制度、ちょっとした利権構造があるのはさほど悪いこととは思わない。どちらも合理性がある。基本的には理にかなっていると言えよう。

ただし、昨今の日本人の働き方を考えると「就職率」という評価の仕方が少し古いと思う。上記のメール内容からすれば、役所的には「就職率=雇用率」と考えていることになる。自営業者としての独立や起業は「就職」の範疇に入っていないのだ。これはハローワーク全体でそうなっているようだ。

だが、日本的な雇用制度が崩れ、働き方も多様になってきた中で、これは少し不合理である。「就職」という範疇の中に独立も含めていいように思う。とりわけWebデザイナーはそういった働き方も多いのだから、「働くとは正社員として雇用されること」という発想はもはやなじまないのではないか。

自民党・菅政権は旧来の雇用慣行をあらため、個人が独立して働くことをよしとしている節がある。おそらく、そういった意向が行政の末端にまで行き渡ってくれば、県の役人の人事評価のあり方や職業訓練校の評価にも変化が訪れるのではないだろうか。

職業訓練を受けようと思ってる人へ

私は残念ながら不合格となってしまったが、基本的にこの職業訓練校はWebデザインに限らずかなりいい制度なので、もしいま失業中の方がいたら積極的に検討してみるといいと思う。とりわけ就職の意志が明確で、これまで正規として長く就労経験がある方は有利だと思う。

しばらくのあいだ月10万円の給付金をもらいつつ、仲間とともに質の高い授業を受け、さらに就職のためのサポートを受けられるとあって、いたれりつくせりである。

ただし、私のように何度も落ちる可能性もある。こうなると、「最初っから独学でやってた方が効率よかった」ということになりかねない。実際、私は今そういう後悔の念でにがい思いをしている。なんとか一人でもやれそう、というならその方がいいかもしれない。

いずれにせよ、希望の就職に近づけるようによくリサーチをしてみよう。グッドラック!

-エッセイ